循環器科について
循環器とは血液やリンパ液などの体液を体内に循環させるための器官のことで、心臓や血管のことを指します。循環器科は主に心臓や血管の病気に関して、診療を行う科目です。
よく耳にする病気としては、狭心症、心筋梗塞、心不全、大動脈瘤などがありますが、これらは一度発症してしまうと、命に関わり、後遺症が残って、生活の質が大きく下がってしまう危険のあるものばかりです。早期に発見し、早期に治療を開始することが非常に大切です。これらの病気の多くは、高血圧や糖尿病、脂質異常症等の生活習慣病によって引き起こされる動脈硬化などが大きな要因となっています。当院では、循環器疾患の早期発見・早期治療はもちろんのこと、生活習慣病の段階からの診療によって、患者様ひとりひとりに即した生活習慣の改善や薬物治療などのサポートによって、重篤な病気への進行を防ぎ、地域における健康寿命の延伸に貢献していきたいと考えています。
当院では、月に1−2回心エコー、頚動脈エコー、甲状腺エコー、下肢静脈瘤エコー検査を予定し、月に1回は経験豊富な循環器専門医による検査・診療を実施しています。
以下のような症状などのある方は、お早めにご相談ください。
- 作業や運動などで体を動かすと動悸がする(鼓動が速くなる、強い鼓動を感じる)
- 以前よりも運動時の息切れがひどくなった
- 歩行・運動時に胸が苦しくなり、休むと楽になる
- 胸に締めつけられるような圧迫感を覚える
- 胸やけがする
- 脈が乱れる、飛ぶ
- 横になっているときに息苦しくなる
- 失神した(意識を失った)
- 足が冷えたり、しびれたり、むくんだりしている
- 下肢がだるく感じる
- 歩行時にふくらはぎが痛む
- 健診などで心音や心電図、胸部X線検査で異常を指摘された
- 健診などで高血圧や高血糖、脂質異常などを指摘された
- このほか心筋梗塞では関連通により広範囲で痛みが生じるため、腕や肩、歯、あごが痛いと感じる場合もあります。
循環器科では、以下のような疾患の診療をしています。
主な疾患について
狭心症
心臓に血液を送る冠動脈が動脈硬化などで狭まり、心臓に血液が十分に行かなくなることで発症する病気です。歩行や階段の昇降等、日常の作業や労働の際に発症する「労作時狭心症」と夜間や早朝時など安静にしているときに冠動脈が痙攣して起こる「冠攣縮性狭心症」があり、動悸や息切れ、胸の痛みや圧迫感などの症状が現れます。狭心症が進行し、血管が完全に閉塞して心筋に血流が届かなくなると心筋梗塞になります。血液の届かない筋肉は壊死し、命の危険があります。
心不全
心不全とは全身に血液を送る心臓のポンプの機能が弱まり、全身に症状が現れる状態を指します。心不全を引き起こす原因としては、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、弁膜症、心筋症、高血圧、不整脈、さらに過度のストレスなども挙げられています。急激に心臓の機能が低下する「急性心不全」と、慢性的に心不全の状態が続く「慢性心不全」がありますが、慢性のものも急激に悪化する場合もありますので、注意が必要です。症状としては、動悸や息切れ。むくみなどが現れます。
不整脈
不整脈は、心臓の拍動が極端に少なかったり(徐脈)、多かったり(頻脈)、あるいは不規則の場合(期外収縮)を指します。心臓を規則正しく動かすための電気信号が、何らかの理由で変化が生じることによると考えられています。徐脈では息切れや疲れ、めまいなど、頻脈では動悸、吐き気など、期外収縮では胸部の不快感などの症状が現れます。ストレス等も原因になるとされ、治療の必要のないものもありますが、心臓弁膜症や心筋梗塞、狭心症などが原因で起こるものもあり、心電図や心エコー等による検査を受けることをお勧めします。
心臓弁膜症
心臓には血液の逆流を防ぐため、僧帽弁、大動脈弁といった弁があります。心臓弁膜症は何らかの原因でこれらの弁の開閉に問題が生じ、血流に異常が現れるものです。初期にはあまり症状がありませんが、次第に心臓に負担がかかっていき、息切れや咳などの症状が出始め、さらに胸痛やむくみ、呼吸困難に陥ることもあります。また心不全や不整脈を引き起こす場合もあります。原因としては、加齢や感染症(リウマチ熱等)、心筋梗塞や心筋炎などの心臓病、先天的な問題などがあります。
大動脈弁狭窄症
心臓弁膜症のひとつで、心臓の左心房にある大動脈弁が狭窄する病気です。原因としては先天的なもの、リウマチ熱の後遺症等に加えて、加齢による弁の肥厚、硬化、石灰化も増加の傾向にあります。大動脈弁が狭窄すると、心臓はより強く血液を送り出そうとするため、左心室の壁が分厚くなり、心肥大がおこります。心肥大になると、心臓が拡張しにくくなり、全身に血液が届きにくくなります。すると息切れなどの様々な症状が出始め、心不全の原因ともなります。また突然死のリスクも高まります。
僧帽弁逆流症
僧帽弁逆流症は、僧帽弁閉鎖不完全症とも呼ばれ、左心房と左心室の間にある便に異常が生じ、完全に締まりにくくなって、心臓の収縮のたびに血液の一部が逆流してしまう病気です。原因としては、主に動脈硬化、心筋梗塞、リウマチ熱の後遺症などが考えられています。全身に効率的に血液が送り出せなくなることから、息切れや心雑音などの症状がみられ、さらに大動脈弁狭窄症と同様、心肥大が起こり、心不全や不整脈を引き起こします。心房細動が現れる場合もあり、心臓内に血栓ができて、脳梗塞を引き起こす危険もあります。
下肢閉塞性動脈硬化症
動脈硬化が進行して血管が狭くなり、閉塞してしまう病気です。主に足の血管で発症する、下肢閉塞性動脈硬化症が多くみられます。血管が狭くなるにつれ血流に障害をきたし、歩行障害が起こります。しばらく歩くと十分な血液が供給されないため、痛みが現れますが、休憩すると徐々に血液が供給されるため、痛みが改善し、また歩けるようになります。これを間欠性跛行といい、下肢閉塞性動脈硬化症の特徴的な症状となっています。さらに悪化すると傷が治りにくくなり、下肢を切断しなければならなくなるという危険性もあります。
大動脈瘤
心臓から全身に血液を送る動脈のうち、特に太い大動脈に瘤(こぶ)ができ、大きく膨らんでしまうのが大動脈瘤です。動脈硬化などが原因で、胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤があります。大動脈瘤は、ほとんど何の自覚症状もなく大きくなっていきますが、瘤の壁は薄いため、圧力がかかって破裂すると、大量出血を起こします。その先の臓器にも血液が行かなくなり、胸痛や意識障害などの症状を呈します。そうなると救命が難しく、破裂した場合の致死率は80~90%に及ぶと言われており、突然死の代表的な原因となっています。健康診断などで大動脈瘤が疑われた場合は、自覚症状がなくても、速やかな治療が必要です。